商品価値が崩壊の"おきゃくさま"
こんにちは。
このブログを始めてから
きもの屋さんにいた頃の、
いろいろを思い出すようになりました。
新卒で入社して、
刺激だらけの毎日でした。
新しいことを覚えて、
できるようになる過程は、いつでも
楽しいものだと思います。
今日の"おきゃくさま"は、
私が入社する前からお店としてお世話になってる
大変頭の上がらない方です。
私が担当して、4人目だったそうです。
きもの界隈には珍しく、
男性です。
泥沼世界のきものは、
はまると本当に抜け出せません。
本当です。
その方もどっぷりでした。
若いのに、大変な買い物を続けていたそうです。(私が担当になる頃には、身の丈に合うお買い物を学んでいました。)
欲しくなるんですきものって。
見れば見るほど、ほしくなります。
ある日、とてもお似合いになる
反物を発見しました。
...微妙な言い回しをします。
お似合いになる、反物を探しました。
その日はお店ではなく、
会場を借りて行う展示販売会で
それぞれが売り上げを背負ってました。
ここが難しいんです。
売り上げを背負いながらも、
お客さんと一緒に楽しい買い物の時間を作り上げる
私は高いものをお見せしました。
70万円くらいの、高い反物。
値段で選ぶと、
好みのものなんて提案できないくらいの未熟さでその方を迎えてしまいました。
優しいんですその方はとても。
鏡で合わせてくれるんです。
私が選んだものを、
いいね!と言いながら。
センスを褒められるって、
ものすごーく嬉しいです。
うっきうきで接客しました。
2時間ほど接客しました。
ですけど、どうしてもその方のお財布を緩めることはできず、
最後憔悴した私たちは、
以下、"おきゃくさま"→お
たまこ→た
た「どのくらいなら頑張れるって思ってもらえました?!.」
お「1万円」
た「........。」
言葉を失いました。
70万円のものを、1万円。
価値がぐずぐずですよもう。
なんてこった。1ミリも響いてなかったじゃねーか。
ごめんなさいほんと、
褒めてもらえたからすごい調子になってました。
買うことがゴールだとしたら、
その反物の価値が崩壊するくらい、
まだずっと手前のほぼスタートラインのところで、
その方のお買い物は止まっていました。
"おきゃくさま"のいいね!は、
店員さんの、「お似合いです〜」みたいなもんだったんです。
(人によるのと、言い方のニュアンスにもよりますが)
その"おきゃくさま"にとって、
新人の私は、
その方に似合うものを選んで、
いいね!を引き出すことが目的の子
だったんですね。
難しいですね〜ほんとに。
だいたいは、
まず外の会場のお誘いしても
来てくれません。
その方は来てくれたんです。
当たり前のように。1つ返事で。
外の会場の展示会。
決して、お買い物をする方だけが行くものではありません。
どちらかと言えばきものがすきな人が、
たくさんのきものに囲まれてじっくり吟味できるすてきなところです。
ただ、そこから先は店員の技量です。
そのくらいの覚悟を持って、
お誘いして、お連れするんです。
それくらいの責任背負って、
一人一人に日々の接客をしています。